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​田村香織「Ride on Islands -島にのること-」


2024.11.1 Fri - 11.14 Thu


この度、SANBANCHOGALLERYでは、田村香織による初の個展「Ride on Islands -島にのること-」を開催いたします。

 

田村の作品は、幻想的な動物をモチーフに、自然を想起させる緑色を基調として、豊かな地球を表現しています。

技法としては、木の板に絵の具を何層にも重ね、ニードルや針を用いて削りながら描く独特な手法が用いられています。この「削る」という行為は、記憶の奥深くに眠るものや消えかけた理想郷を掘り起こし、それを形にしていく過程と重なります。

そして、掘り起こされたイメージが再び消え去ることのないように、田村はテンペラという技法を使い、その記憶や風景をより鮮明で永続的なものとして表現しています。

テンペラとは、顔料に卵や牛乳などの動物性タンパク質を練り合わせて作る絵具のことです。

乾きが早く耐久性に優れ、明るく鮮やかな色彩を持ち、時間経過による変色が起こりにくいという特徴があります。

西洋美術の歴史の中で非常に人気を集めた絵具の一つです。



「Ride on Islands」 テンペラ 1200×1200mm
「Ride on Islands」 テンペラ 1200×1200mm


~「Ride on Islands -島にのること-」~

本展では、「島」の風景や自然を観察することで見えてくる魅力を、田村の新しい視点で描いた展示となっています。

田村は、台湾やインドネシアのバリ島、オーストラリアのロットネスト島など、さまざまな島々を旅し、日本では松島や出雲を訪れました。これらの場所で感じた豊かさを表現したいという思いが、本展の出発点となっています。


水に囲まれた「島」は、地理的および生態系的に独特な特徴を持ち、限られた空間に独自の動植物が豊かに生息しています。

その自然豊かな「島」は一見楽園のように映りますが、実際には自然災害や絶滅による生態系の変動など厳しい側面も内包しており、これは現代社会における限られた空間、たとえば学校や職場などにも似ています。

魅力的な表面の裏には圧力や制約が存在し、限られた空間の中に存在する二面性は私たちにとっての「島」としての特性を持っているのです。


そのような限られた空間として、日本文化の中には枯山水がありました。

枯山水は静かに自分自身を見つめる大切な文化として、石や砂を用いて流れる水の風景を表現し、植物と石が織りなす色の対比や、石と砂だけが醸し出す静かな佇まいを小さな空間に見出し、心豊かにしていました。

かつて人々は限られた空間の中でも心を落ち着け、想像力を膨らませることができたのです。


厳しい自然環境と同様に、社会にもさまざまな制約が存在しますが、それらを乗り越えることで新たな豊かさが見えてくることもあります。


本展では、それぞれの「島」に「のること」で、今まで見えなかったものが見えるように削り掘り起こし、私たちが目に見えるものへの尊敬と見えないものへの想像力を大切にすることで、日々の生活や世界がより豊かになるというメッセージを込めた展示となっております。



田村香織が表現し続ける深遠な豊かさの数々を、ぜひこの機会にご高覧くださいませ。



SAN BANCHO GALLERY

三番町ギャラリー








~作家より~

「Ride on Islands」は田村香織の作品が島国を観察し風景を拡張して描くことにより島の新たな視野を模索するものである。

作品には島が海に根を張り、カツオドリが空を飛び、島を耕していく。生き物のように鎮座した山々が水を貯める。移ろう季節に怪獣のように厳しい自然もやってくる。

 

日本文化にある枯山水を例に、かつての人々は制約された空間に砂や石を海や島に見立て空から島々を眺めているかのような景色を作り、その中を散歩したり、鑑賞したりと心を落ち着かせ嗜んだ。

この延長線にいる私たちも日々の中で見えるものへのリスペクト、見えないものへの想像を心に留めておくことにより、世界が豊かになるのではないかと考える。


‐緑について‐

地球の核を覆うマントルの主成分がカンラン岩であるという研究がある。

カンラン岩は若緑色、だとしたら土の下には深緑の世界が広がっているかもしれない。

その上に私達は立っている。

作品画面を削ることでその世界を掘るかのように自身の足元に制作意欲を這わせてみた。


田村香織






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